「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生に聞きました!(後編)

「学校が楽しい!」
そのきっかけづくりとは?

さまざまな工夫で子どもの自主性を引き出す、現役小学校教諭・沼田晶弘先生。シリーズ後編は、「学校が楽しい!」と思える、さまざまなしかけについてお話をうかがいました。

目 次

◆学校は「気持ちのぶつかり稽古」。個性がぶつかるのがいい

◆やる気を引き出すポイントは「自分ごと化」

◆楽しむ親は最強の教育者。それで子どもは元気になれる

 
 

学校は「気持ちのぶつかり稽古」。個性がぶつかるのがいい

−「学校の楽しさ・おもしろさ」は、どんなところにあると思いますか?

(沼田)いろいろな人がいっぱいいるところです。自分とは違う誰かと一緒にいること自体が学校のおもしろいところなんじゃないかな。僕はよく、「気持ちのぶつかり稽古」と言っています。学校は、ぶつかって稽古するところなんです。いろいろな人と出会わなければ、自分の個性にも気づかない。自分の個性に気づくには誰かとぶつかることも必要です。学校で自分と違う常識をもった人と関われるのはおもしろいし、とてもいい人生経験になるのではないかと思います。

−特に1年生への接し方で気を配っていることはありますか?

(沼田)特に「1年生」というのは僕の中にはあまりなく、大人だろうが子どもだろうが、同じ人として接しています。というか、日本には会話に年齢制限がありすぎませんか?「1年生にこんな話をするの?」という声を聞くことがありますが、僕は円安だって食糧問題だって、1年生と話しますよ。大人と同じ意見ではないかもしれませんが、彼らなりの考えがちゃんとあり、答えが返ってきます「なるほど」と気づかされることもあったりして、それがまたおもしろいんです。


やる気を引き出すポイントは「自分ごと化」

−「勉強が楽しい」と思えるように、子どものやる気を引き出すポイントはありますか?

(沼田)ポイントは、いかに「自分ごと化」できるかです。自分ごと化できたら、子どもってあとは勝手に学び出します。自分ごと化させるためには、「おもしろいから、もっとやりたい」「○○できるようになりたい」というような、がんばる理由や目的を子どもがもつことが大切です。僕も日々考え、授業の中でさまざまな工夫を試しています。

やる気になる! 計算トレーニング

(沼田)例えば「計トレ」。縦横9マスずつ81マスを使った計算トレーニングです。スタートの合図とともに81マスをかけ算で埋めていき、そのタイムを計ります。制限時間を設けたり、間違えるとペネルティをつけたり、1分以内に全問正解したら「神」の称号を与えたりと、子どもたちがゲーム感覚で夢中になれるしかけをつけています。

1年生は足し算でアレンジできます。タイムを縮めたいからと休み時間に自習する子や、家で自主トレをしてくる子も出てくるんです。「先生、家でずっと計トレやってるんですよ」と親御さんに言われたこともありますね。こんなふうに自分ごと化してやる気になり、「勉強って楽しいな」「もっとがんばりたい」という経験を積めば、子どもは自分から勉強するようになります

楽しさプラス! ご褒美チケット

(沼田)また、ご褒美をあげることもありだと思います。僕のクラスは漢字テストで満点を取ると、焼き肉チケットにかえられます。本物のチケットじゃないですよ(笑)。親御さんに「お子さんが焼き肉チケット(満点の漢字テスト)を持って帰ったら、家族で焼き肉を食べに行ってください」と話しているんです。だから、大体漢字テストは木曜か金曜にやるようにしています。そうするとちょうど土日に「焼肉行こうか!」となって、焼き肉チケットが使いやすいでしょ。目標がはっきりして楽しさがプラスされると、自分ごと化されやすくなるのではないでしょうか。


楽しむ親は最強の教育者。それで子どもは元気になれる

−今後も子どもが元気で楽しく学校に行けるよう、家庭でフォローできることはありますか?

(沼田)親が楽しむことがいちばん。楽しんでいる親は、子どもにとって最強の教育者です。何歳までに何をしなくてはいけないとか、こうあるべきとか、「べきべき論」に縛られないでいてほしいです。今、親の手を離れて学校で奮闘しているお子さんを温かく見守ってあげてください。とにかく親が楽しむ。親が楽しいのが最強なんですから。



沼田晶弘(ぬまたあきひろ)先生のプロフィール

国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。1975年東京都生まれ。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院でスポーツ経営学の修士修了。インディアナ州マンシー市名誉市民賞受賞。2006年から現職。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が多くのテレビや新聞、雑誌などに取り上げられている。学校図書「生活科」教科書著者。『世界標準のアクティブ・ラーニングでわかった ぬまっち流 自分で伸びる小学生の育て方』(KADOKAWA) 、『もう「反抗期」で悩まない! 親も子どももラクになるぬまっち流思考法』(集英社)など著書多数。


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