「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生に聞きました!(前編)

〜ウィズコロナ時代〜
学校の様子は? 友だちはできる?

いよいよ小学校生活がスタート! 入学後の様子が気になる保護者も多いのではないでしょうか。今回は、さまざまな工夫で子どもの自主性を引き出す、現役小学校教諭・沼田晶弘先生にお話をうかがいました。ユニークな授業内容や沼田先生流の子どもとの向き合い方など、たっぷりとお届けします。

目 次

◆できることはとことんやらせる。自分でやるのが学びのチャンス。

◆書く内容はなんでもOK! 交換日記でいつでも話せる関係づくり

◆「自分はできる」という自己効力感をつけてほしい

 
 

できることはとことんやらせる。自分でやるのが学びのチャンス。

−入学したばかりの1年生はどんな様子なのですか? コロナ前とでは、子どもたちの様子に変化を感じますか?

(沼田)子どもたちは元気です。特に変わらないですよ。というより、コロナとは関係なく、入学してくる子どもたちは、その年、その年で違いますから……、比べようがないかもしれません。

ただ、マスク生活のせいで、お互いの顔がなかなか覚えられない、というのはもちろんあります。体育や、休み時間に外で遊ぶときはマスクを外す子が多いのですが、教室に戻ったらまたつけなくてはいけない。その切り替えに、特に1年生は戸惑うことがあるでしょうね。でも、それくらいで、大人が心配するより子どもは順応していて、そういうものだと思って生活しています。

−1年生に対して、先生が特に気を配っていることはありますか? また、家で気を配ってほしいことはありますか?

(沼田)小学校に入ったら、自分のことは自分でやってもらうようにしています。「ランドセルに筆箱が入ってなかった〜」「あれ?給食セットはどこ?」などと、まるでおうちの人が用意してくれなかったように言ってくる子には「おうちの人にやってもらうのではなくて、自分でやろうね。自分でやるのが小学校だよ」と教えています。

ご家庭でも、お子さんがやろうとすることには口出しせずに見守ってください。「洗い物をやる!」と言い出したら、とことん自分でやらせてください。失敗してもいいんです。一度失敗しても、子どもって次は失敗しないように工夫するもの。それが学びなのです。失敗しないように親がフォローしすぎると、確実な成功体験が積めないうえに、学びの機会まで奪ってしまうことになります。親は失敗を受け止めてあげることが大切です。


朝の着替えもこれでバッチリ! 親ができる工夫


(沼田)もちろん、親にも工夫すべきことはあります。例えば、1年生って着替えるだけでも時間がかかりますよね。そこで、僕は体育の着替え時に音楽をかけます。子どもたちがよく知っている曲とかテンポのいい曲とか、イントロでぱっとわかる曲を選ぶのがコツです。それが流れ出すと「キャー!」とか言いながら、子どもたちは着替え始め、曲が終わるころにはしっかり準備が整っています。

このことを授業参観で伝えたら、早速、家で試したという親御さんがいて、めちゃくちゃ感謝されました。朝、同じ曲を流したら、さっと着替えて、きっちり330秒で食卓に座ってくれたと。「早く着替えなさい!」なんて言わなくても、ほんのちょっとの工夫でお互いラクになるんですよね。


書く内容はなんでもOK! 交換日記でいつでも話せる関係づくり

−1年生の子が周りと打ち解けやすくなるために、働きかけていることはありますか?

(沼田)僕は「1年生だから」といって、特別なことはしていません。どの学年の担任になっても、クラスの子一人一人と毎日交換日記をします。これだけはくずせない自分のスタイルで、教師1年目からずっと続けています。

内容はなんでもいいんです。「おはよう」とだけ書いてくる子もいる。目的は「毎日出す」こと。そうすれば、普段あまり話さない子ともコミュニケーションが取れるし、いつか悩みが出てきたときに日記を使って伝えてもらうことだってできるじゃないですか。

「何かあったら先生に相談しなさい」とは言うものの、人に聞かれたくない悩みを相談するタイミングってけっこう難しい。そもそも先生と二人きりで話す場所なんて学校にはないんです。


(沼田)日記は朝いちばんに見ます。どんな小さな悩みでもすぐに解決したいからです。「最近ちょっと言葉きつくない?」と朝の会でさりげなく注意したり、休み時間に子どもの席に座って雑談しながら観察したり。

僕が行動に移すことで「先生はなんとかしてくれる」と、信頼関係が生まれますよね。本人からだけでなく、「最近AさんたちがBさんをいじめている」と知らせてくれるケースもあります。毎日出していれば、そういうことも書きやすくなります。それもねらいです。

ちなみに、この日記は親に見せなくていいやつです。なかには、親への愚痴を延々と書いてきた子もいました。最後に「あ〜すっきりした!」と締めくくっていたので、それはそれでいいのかなと。笑


−子どもの友だち関係は気になるものですが、親はどのように関わればよいでしょうか?

(沼田)お子さんの話を聞いてあげるだけでいいと思います。「最近だれと仲がいいの?」と、あれこれ聞きたがる親御さんもいますが、子どもって「だれ」とか関係なく、例えば純粋にサッカーが好きで楽しいだけの時期とかもありますから。

それに友達関係はいつの間にかできてくるものだと思います。親はあまり関わり過ぎないようにして、「最近楽しそうだね」「今日は何して遊んだの?」とか、その日あったことを聞いてあげてください。


「自分はできる」という自己効力感をつけてほしい

−これから小学校生活が始まるお子さんをもつ保護者のみなさんにメッセージをお願いします。

(沼田)小学校は「学ぶところ」。自分でがんばらなきゃいけないこともあります。そんななかで、僕は子どもたちに自己効力感をつけていってほしいと思っています。「自分ならできる」と信じられる感覚です。

失敗やできないこともありますが、ごまかさず、一緒に受け止めればいいじゃないですか。目標に向かって戦った結果、うまくいかなかったとしても、全力でがんばったプロセスは必ず自信につながります。お子さんの力を信じて応援してあげてください。


【編集部より】
いかがでしたか?5月号では、沼田先生のお話(後編)をお届けします。お楽しみに!

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沼田晶弘(ぬまたあきひろ)先生のプロフィール

国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。1975年東京都生まれ。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院でスポーツ経営学の修士修了。インディアナ州マンシー市名誉市民賞受賞。2006年から現職。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が多くのテレビや新聞、雑誌などに取り上げられている。学校図書「生活科」教科書著者。『世界標準のアクティブ・ラーニングでわかった ぬまっち流 自分で伸びる小学生の育て方』(KADOKAWA) 、『もう「反抗期」で悩まない! 親も子どももラクになるぬまっち流思考法』(集英社)など著書多数。




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